『たむら市政だより』2025年4月号 地球温暖化問題と「デコ活」について

『たむら市政だより』2025年4月号 地球温暖化問題と「デコ活」について

2025年4月1日

『たむら市政だより』4月号の連載記事「ちょこっとエコライフ~身近な省エネを実践しよう!~」Vol. 20「デコ活ってなに?」で記載した、地球温暖化問題と「デコ活」について解説します。
まず、地球温暖化問題とは何か、ここでもう一度、振り返ってみましょう。

地球温暖化とは

太陽から放出され地球に到達する光エネルギーは、約3割が雲や雪などに反射されて宇宙に戻り、約7割は海や陸地に吸収されます。地球の表面に吸収されたエネルギーは大気へ放たれ、宇宙へと逃げていきます。大気中に存在する二酸化炭素(CO2)などの「温室効果ガス」が、逃げようとする赤外線を吸収して、また赤外線を放出します。放出された赤外線の一部は地表面に戻ってくるため、温室効果ガスには地表面付近をあたためる効果があります*1。大気中に温室効果ガスがあることによって、地表から放たれる熱を吸収し、熱を宇宙に逃げにくくすることで、地球の平均気温が約14℃に保たれています(図表1参照)。もし、大気中に温室効果ガスがなくて、地表から反射されたエネルギーが何にも遮られず宇宙に放出された場合、地球の平均気温は約-19℃となり、地球は人間が暮らしにくい環境となっていたと言われています。

図表1.温室効果ガスと地球温暖化メカニズム
温室効果ガスと地球温暖化メカニズム

温室効果ガスとは、地球温暖化の主な要因といわれる気体で、赤外線を吸収?再放射することで地球の大気、および海洋温度を上昇させる性質を持つ気体です。二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスが挙げられます(図表2参照)。なお、地球温暖化の影響度は温室効果ガスによって異なり、それぞれの温室効果の程度を示す「地球温暖化係数」は、メタンは同じ量のCO2の25倍、N2OはCO2の298倍あるとされています(ガスにより寿命の長さが異なることから、温室効果を見積もる期間の長さによってこの係数は変化します)。

図表2.人為的な温室効果ガスの種類
人為的な温室効果ガスの種類
[出典]環境省「授業、セミナーで使える地球温暖化学習コンテンツ」
「地球温暖化と私たちの暮らし?未来 【授業スライド】テーマ2:地球温暖化の基礎知識」2021年3月(2023年3月改訂)より引用。

温室効果は、約50%が水蒸気、約20%がCO2によるものとされていますが、大気中のCO2濃度が増加することによって温暖化が進行すると、大気中の水蒸気が増え、さらに温暖化が進むことが予想されています*2

産業革命以降、私たちは石油?石炭等の化石燃料を使用して多くのCO2を排出してきたことで実際に、大気中のCO2世界平均濃度は上昇しています。産業革命の始まった頃の280ppmから、2013年には400ppmを超えて(図表1参照)、2023年のCO2濃度は、420ppmとなり、工業化以前(1750年)の平均的な値とされる約278ppmと比べて、51%増加しています(図表3参照)。

図表3.大気中二酸化炭素の世界平均濃度の経年変化
大気中二酸化炭素の世界平均濃度の経年変化
(注)大気中の二酸化炭素の世界平均濃度。青色は月平均濃度。赤色は季節変動を除去した濃度。
[出典]気象庁「大気中二酸化炭素濃度の経年変化」より引用。

大気中のCO2が濃くなることで、熱が宇宙に放出されにくい状態になったために、地球の気温が上昇する「地球温暖化現象」が引き起こされます。実際、地球の平均気温は産業革命以後、上昇傾向にあります。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書では、人間活動の影響で地球が温暖化していることについては「疑う余地がない」と結論されました。産業革命前(1850-1900年の平均で近似)から近年(2010-2019年の平均)の間に観測された気温上昇量は1.06℃、同じ期間に人間活動の影響でもたらされた気温上昇量は1.07℃と評価されました。人間活動の影響とは、主にCO2などの温室効果ガスが大気中に増加したことによる加熱効果で、その一部は大気汚染物質(エアロゾル)の増加による冷却効果によって打ち消されています(図表4参照)。

図表4.地球の気温上昇の変動グラフ
地球の気温上昇の変動グラフ

また、IPCCでは、温暖化対策をせず、二酸化炭素の排出量が2050年で2倍になった場合、21世紀末の世界の平均気温は、3.3~5.7℃上昇(茶色の線)が予測されています。気温上昇を低く抑えるための温暖化対策をとり、CO2排出量が2050年ゼロになった場合でも1.0~1.8℃上昇(水色の線)する可能性が高いと公表されました(図表5参照)。

図表5.世界の平均気温の変化の予測
冬季と夏季の熱の流入と流出
[出典] 環境省「授業、セミナーで使える地球温暖化学習コンテンツ」
「地球温暖化と私たちの暮らし?未来 【授業スライド】テーマ3:地球温暖化の将来予測」2021年3月(2023年3月改訂)より引用。

地球温暖化が進行した結果、南極の氷の融解による海面上昇や、アマゾン熱帯雨林の干ばつ、アフリカの砂漠化の進展などが生じています。日本では、高温多湿による熱中症患者の増加や、集中豪雨による内水氾濫、農作物への影響などが懸念されています。しがたって、この地球温暖化は世界全体が取り組むべき課題となっています。図表5では5本の折れ線によって5つのシナリオが表されています。 図表6と7は、IPCC第6次評価報告書における5つのSSPシナリオです。工業化前から2100年までの気温上昇を1.5℃以内の抑えるシナリオでは、CO2排出量が2050年頃に正味ゼロとなっていることがわかります。

図表6.IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオ(グラフ)
 IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオ(グラフ)
[出典] 環境省「授業、セミナーで使える地球温暖化学習コンテンツ」
「地球温暖化と私たちの暮らし?未来 【授業スライド】テーマ3:地球温暖化の将来予測」2021年3月(2023年3月改訂)より引用。
図表7.IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオ(概要)
IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオ(概要)

地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として、世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに(2℃目標)、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること等に合意しました。世界の気温上昇を産業革命前から2度より十分に低く抑えるとともに、1.5度以内を目指して努力することを目的として掲げていますが、これを達成するためには、CO2排出量が2050年頃に正味ゼロとしなければならないのです。これが2050年カーボンニュートラルという目標と設定された背景です。

カーボンニュートラルとは

CO2排出量を2050年頃に正味ゼロにするために、世界が取り組みを進めており、2023年5月時点で、147か国が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。日本も2020年10月、菅首相(当時)が所信表明演説の中で、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指す」と宣言しました。カーボンニュートラルとは、現在は増加傾向にあるCO2などの温室効果ガスを2050年では温室効果ガス(図表8ではCO2と表示)の排出量から、植林や森林による吸収量を差し引いて、合計としてゼロにするという意味です。

図表8.カーボンニュートラルの仕組み
カーボンニュートラルの仕組み
[出典] 環境省「脱炭素ポータル」より引用。

カーボンニュートラル実現のために、地方自治体、企業、国民一人ひとりには、それぞれできることがあります。環境省は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国民?消費者の行動変容、ライフスタイル変革を強力に後押しするため、新しい国民運動「デコ活」を展開しているのです*3。 デコ活では、国民?消費者の行動変化、生活様式の転換を促すために、図表9のように、暮らしの領域を「住居[外?内]?衣服?買い物?食事?職?移動?基盤」の7つに分けて、生活全般にわたる将来の暮らしの全体像(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの10年後)が紹介されています。例えば、地元産の旬の食材を積極的に選ぶこと、宅配便を1回目の配送で受け取るようにすること、家の窓や壁等を熱を伝えづらいものにする「断熱住宅」にするなど、7つの領域ごとに様々なサポート情報がデコ活では提供されています。

*3デコ活
図表9.「デコ活」(脱炭素につながる新しい生活様式の紹介)
「デコ活」(脱炭素につながる新しい生活様式の紹介)

国際環境経済学科2年 塩田